【レポート】看護部長がACPを学び・体験するふたこメディケアカフェに登壇しました

先日、二子玉川あんしんすこやかセンター(二子玉川あんすこ)で開催された「ふたこメディケアカフェ」に、世田谷記念病院の中村看護部長が講師として登壇しました。
今回のテーマは「ACP 多職種で学び語り合おう~作成時の思いを聞きながら、レッツトークをやってみよう~」です。 地域のケアマネジャーや看護師、ソーシャルワーカーなど多職種のみなさんと一緒に、病院での「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」取り組みやレッツトークカードを体験しながら自分らしさを考える時間となりました。
ACP(人生会議)とは?
厚生労働省はACPを「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームとあらかじめ考え、繰り返し話し合い、共有していくプロセス」と説明し、より親しみやすい呼び方として「人生会議」という愛称を付けています。
「もし重い病気になったらどうするか」を急に決めるのではなく、
- ふだん、どんな暮らしを大切にしているか
- どんな時間が「その人らしさ」を感じるか
- いざという時に、どんなことだけは大事にしたいか
こうしたことを、元気なうちから少しずつ言葉にしていく。その積み重ねがACPです。
坂井教授から「対話としてのACP」のお話

会の前半では、ACPの研究・実践に取り組んでいる上智大学 坂井志麻教授から、ACPの成り立ちと考え方についてお話がありました。
- ACPは対話のプロセスが大事であること
- 人の気持ちは病状や生活状況によって変化していくもので、繰り返し話すことが前提であること
- 話し手だけでなく、聞き手の姿勢(遮らず、決めつけず、最後まで聴くこと)が、自己理解を支えること
など、「専門職としてどう“聞くか”」を改めて見つめ直す内容でした。
中村看護部長が紹介した、世田谷記念病院の取り組み

続いて当院の中村看護部長からは、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟を持つ地域密着型病院として、どのようにACPの活動に取り組んでいるかをご紹介しました。
まず院内の取り組みとして、職員約300名を対象にACP解説動画を視聴してもらう取り組みを実施。視聴後のアンケートでは、医療職からは「患者のためにACPを学びたい」という回答が多く得られた一方で、「自分自身のことを家族と話したい」という項目にはチェックがあまり入らないという対照的な結果が示されました。
こうした結果を踏まえ、新人研修や院内研修ではACP解説動画に加えてカードゲームも取り入れ、「まずは職員自身が、自分の価値観を言葉にしてみる」体験を重ねる取り組みを進めています。
さらに、二子玉川あんすこや世田谷区内の多職種連絡会、世田谷区看護管理者会(ジャスミン会)やローカルラジオ(エフエムせたがや)での情報発信など、病院の外に出て地域と一緒にACPを育てていく視点についてもお話しました。
レッツトークカードで「今の自分に大切なこと」を語り合う

後半は、レッツトークカードを使ったグループワークを行いました。
レッツトークカードは、
- 「好きな場所で過ごせる」
- 「お金の心配がない」
- 「誰かの役に立てている」
…など、「こんな状態で過ごせたら自分らしい」と感じる言葉が書かれたカードを選びながら、自分にとって大切なことを整理し、他の人と共有していくカードゲームです。
参加者の声から見えたこと


グループワークの振り返りでは、こんな感想があがりました。
- 自分らしさを言葉で表現すること(言語化)は難しいのでカードがあると選びやすい
- 他の人が選んだカードとその理由を聞くことで、同じカードでも捉え方が全然違うとわかった
- 新人研修や家族、世代が違う人たちでやってもおもしろそう
“人生の最終段階の医療”というと重く感じがちですが、今回は笑い声も交えながら、
「今の自分にとって大事なこと」を楽しく語り合う時間となりました。
その積み重ねこそが、将来の医療やケアを一緒に考えるための土台になるACPだと言えます。
素敵な機会をくださった二子玉川あんしんすこやかセンターの皆さんありがとうございました。
世田谷記念病院は、病院の中だけで完結せず、地域のみなさんと一緒にACPの文化を育てていく姿勢を大切にしながら、今後もさまざまな連携や取り組みを続けてまいります。

