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世田谷ニュース

第13回院内研究発表会を開催しました

<発表会概要>
主催  学術・教育研修委員会
日時  令和7年1月27日(月)
場所  世田谷記念病院 2Co HOUSE 2階
登壇者 看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士等院内スタッフ

※世田谷記念病院では、よりよいサービスを患者さんに提供するため、データの集積・研究・発信を目的に、年1回、全職種を対象とした研究発表会を開催しております。

先日、1月27日(月)に開催された「第13回院内研究発表会」では、当院各職種スタッフが2Co HOUSEに集い、日々現場で勤務する看護師や介護、リハスタッフの7組が1年間準備してきたそれぞれの研究内容を共有しました。 研究発表は、コンペティション形式で行い、聴講スタッフからの投票で、最優秀賞と優秀賞それぞれ1名ずつ選出いたしました。院内での研究発表の機会を経て、次年度*「平成医療福祉グループ学会」での発表へ向けて準備を進めてまいります。

最優秀賞

岡田さん(作業療法士)

タイトル: 
長期入院中の脳卒中患者に対し、ADOCによる目標の再設定と更衣動作に焦点を当てた課題指向型トレーニングを実施

“ADOC”とは、「作業選択意思決定ソフト」で作業療法で使用するiPadアプリです。本アプリを使用することで、患者さんと作業療法士が一緒に目標を決める際のコミュニケーションがスムーズになります。

今回は、長期入院によりリハビリへの意欲が低下していた患者さんに対し、このアプリを活用して目標を再設定しました。目標にしたのは、患者さんにとって重要度の高い「更衣動作(服の着替え)」です。5週間のリハビリ期間において、長袖・半袖の着替えにかかる時間を段階的に調整しながら訓練を実施しました。

更衣の自立度を判断するために、過去の研究を参考に考察を行いました。また、先行研究の中で、成功体験を得やすくするための数値的なフィードバックが有効であるとされています。今回の指導方法や段階的なアプローチなどの工夫によって、患者さんが主体的に取り組むことができました。その結果、“ADOC”の活用により、患者さんの満足度が向上し、意味のある改善につながったと考察しています。

優秀賞

鈴木さん・那須さん(看護師)

タイトル:
脳卒中後に抑うつを呈した患者に対するケアに関する一考察~他職種連携を通して~

「脳卒中うつ病(PSD)」とは、脳卒中の後にうつ症状が現れる病気のことです。この病気は、死亡率が高くなることや、リハビリの効果が十分に得られない可能性があることがわかっています。そこで、脳卒中後に抑うつ症状が見られた患者さんに対し、どのような関わり方が有効だったのかを、多職種の連携という視点から考察しました。この研究が、同様の課題に直面した患者さんへの対応の手がかりになると考えています。
対象となったのは、脳卒中後に抑うつ症状を呈した70代男性(M氏)です。
急性期の治療後、M氏には悲観的な発言や訴えが見られました。それぞれの専門職が共感を示しながら対応することで、一時的に症状は和らぎました。しかし、日常生活動作(ADL)が向上し、自宅退院の話が具体化すると、再び悲観的な発言が増えました。
この状況に対し、臨床心理士が一時的に介入し、退院までのスケジュールを共有することが有効であると判断しました。そこで、情報を多職種間で共有し、患者さんが今後の流れを明確に理解できるようにしました。その後も悲観的な言動は続きましたが、リハビリは継続することができ、最終的には本人とご家族の希望どおり、自宅へ退院することができました。

本研究を通じて、以下のことがわかりました。
1.PSDや情動障害(感情のコントロールが難しくなる症状)について、入院直後から正しい知識に基づいた適切な対応を行うことが重要である。
2.看護師が多職種の連携を主導することで、ケアの質の向上が期待できる。
今後も、多職種の連携を深めながら、患者さん一人ひとりに適した支援が大切であることが共有されました。

前回の様子はこちら