食事摂取量低下の原因を必ず突き止める
食欲や食事摂取量が低下している時、そこには必ず患者さんそれぞれの原因があります。治療を考えるうえでの第一歩はその原因を突き止めることです。問診内容や身体所見から疑わしい部分の検討をつけ、必要に応じて専門的な検査を追加し、原因を明らかにします。
患者さん一人ひとりに合わせた食事提供体制
当院では「絶対に見捨てない。」の理念のもと、どのような患者さんでも受け入れられるよう、多種多様な食事の種類を用意しており、患者さん一人ひとりに合わせて管理栄養士がカスタマイズし、提供しています。
嚥下(えんげ)調整食
当院では日本摂食嚥下リハビリテーション学会が提唱している「嚥下調整食分類2021」をベースに主食(ごはん)5段階、副食(おかず)6段階の嚥下調整食を組み合わせて、患者さんの摂食嚥下機能の回復状況に合わせて提供しています。
嚥下食というと安全性ばかりが強調され、見た目が悪く食欲が失せそうなものを想像するかもしれませんが、当院では食べる楽しみ、食べる喜びを感じていただけるよう、手作りにこだわり、食感や盛り付けに様々な工夫を施しています。月に1回、管理栄養士とSTが会議を開催し、嚥下調整食の食材の選定や既存のメニューのさらなる質向上に取り組んでいます。
疾患の治療に必要な特別食
すべての患者さんのお食事について医師や管理栄養士を中心に多職種で検討された治療食を提供していますが、そのなかでも一部の疾患に対して治療のために調整された食事を特別食と呼びます。
当院では14種類(心臓食、腎臓食、糖尿食、脂質異常症食、膵臓食、潰瘍食、肝臓食、貧血食、検査食 など)を常時提供できるように準備しています。
付加食
付加食とは、食事が十分に取れていない方や、取れていても栄養量が不足している方が必要な栄養を補給できるよう、食事に付加する栄養補助食品や飲料のことを指します。グループではオリジナルのものを作成し、より積極的に食事を取れるように力を入れています。既製品のほか、オリジナルの手づくりの付加食を常時約80種類ご用意しています。
栄養補助食
通常の食事だけでは必要栄養量が満たせない場合に、栄養価の高い栄養補助食を追加します。市販の栄養補助食だけでなく、医薬品として処方可能な栄養補助食品もあります。また、手作りによる対応も可能です。
栄養強化食
中鎖脂肪酸パウダーやプロテイン、粉あめなどを通常の食事に混ぜると、同じ量でもカロリーやたんぱく質などを多く含ませることができ、いつも通りの食事でも必要栄養量を満たせます。たくさん食べられない人に向いています。
安全な飲料摂取を目指して
嚥下障害のある方が安全に飲み物を摂取するためには適切なとろみつけが必要です。最新の機械「とろみサーバー」を各階の食堂に導入し、いつでも誰でも安全に必要なとろみがついた飲み物を摂取できる環境を整えています。
飲み物にとろみをつける目的
嚥下障害を有する方の飲み物にとろみをつける主な目的は「嚥下反射の遅れに対し、飲み物が喉を流れるスピードをゆっくりにして誤嚥を防ぐこと」です。日本では日本摂食嚥下リハビリテーション学会が患者さんの状態によってとろみの段階を示しており(※)、状態に応じてとろみの濃度を使い分けることが必要です。その濃度は強すぎても弱すぎてもいけないため、個々の嚥下反射の遅れに合わせたとろみ濃度の飲み物提供が必要となります。そのためには一定の濃度の飲み物を提供できる機械の存在は強い味方となります。
献立にない食事提供への積極的な対応
献立になくとも、患者さんが食べたいもの、食べられるものがあれば病院で提供しています。作れるものは作る、作れないものは買うなど、患者さんが食べたいもの、食べられるものがあれば対応に努めています。そのような取り組みをきっかけに少しずつ摂取量が増え、安定した食事摂取が可能となり、通常の病院食でも十分に食べられるようになる事例は少なくありません。
ご家族からの持ち込み食へ柔軟な対応
ご家族からの持ち込み食も積極的に受け入れています。食欲不振の方の場合、患者さんの状態に合わせ、本人が望むもののなかで少量、高エネルギーなものを差し入れていただくことがあります。嚥下機能が落ちている方の場合、差し入れしたものを管理栄養士がミキサーにかけ、とろみを付けて適切な食形態に調整して提供しています。
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